生死去来眞實人體といふは、いはゆる生死は凡夫の流轉なりといへとも、大聖の所脱なり。超凡越聖せんこれを眞實體とするのみにあらす。これに二種七種のしなあれとも、究盡するに、面面みな生死なるゆゑに、恐怖すへきにあらす。ゆゑいかんとなれは、いまた生をすてされともいますてに死をみる。いまた死をすてされともいますてに生をみる。生は死を罣礙するにあらす、死は生を罣礙するにあらす、生死ともに凡夫のしるところにあらす。生は栢樹子のことし。死は鐵漢のことし。栢樹はたとひ栢樹に礙せらるとも、生はいまた死に礙せられさるかゆゑに學道なり。生は一枚にあらす、死は兩匹にあらす。死の生に相對するなし、生の死に相待するなし。
たとひ三大阿僧祇劫、十三大阿僧祇劫、無量阿僧祇劫まても、捨身受身しもてゆく、かならす學道の時節なる進歩退歩學道なり。禮拝問訊する、すなはち動止威儀なり。枯木を畫図し、死灰を磨塼す。しはらくの間斷あらす。暦日は短促なりといへとも、學道は幽遠なり。捨家出家せる風流、たとひ蕭然なりとも、樵夫に混同することなかれ。活計たとひ競頭すとも、佃戸に一斉なるにあらす。迷悟善悪の論に比することなかれ、邪正眞僞の際にととむることなかれ。
今月の定例参禅会には4名の新しい方が参加されました。龍泉院参禅会のことは4名とも龍泉院のHPで知ったとのことでした。
講義が終わり幹事などからのお知らせの時に、小畑元代表より角川ソフィア文庫『道元「赴粥飯法」』を参加者全員に配られました。
本書は当参禅会主催の「洞山良价禅師1150回大遠忌」の際、ご講演を賜りました駒澤大学名誉教授石井修道先生の監修で、執筆陣は曹洞宗総合研究センターの客員研究員である清野宏道さんをはじめ研究員5名の方々です。
禅の悟りは日常の生活の中に見出すもので、「食」は大事な修行の場です。『赴粥飯法』は曹洞宗僧侶の基本的な行動規範であり、道元禅師の「食」に対する教えが説かれた書です。
本書は食事作法について極めて詳細に記されています。さらに食事に当たっては、食事にたずさわってきた多くの人々への感謝を示すことも説かれています。また自分を満たすだけではなく、食べ物に困っている人へも想いを向け、心穏やかに生きて行くヒントが説かれています。
『典座教訓』の姉妹編ともいうべき『赴粥飯法』は、今まで目を通したことがありませんが、本書を熟読することにより、道元禅師の「食」に対する教えを学びとって行きたいと思っています。また、本書を賜ってくださった小畑元代表には、心より感謝申し上げる次第です。
なお、今月の定例参禅会は都合により『正法眼蔵』のご提唱はお休みとなりました。
たとひ威音王よりさきに、發足學道すれとも、なほこれみつからか兒孫として増長するなり。
盡十方世界といふは、十方面ともに盡界なり。東西南北四維上下を、十方といふ。かの表裏縦横の究盡なる時節を思量すへし。思量するといふは、人體はたとひ自他に罣礙せらるといふとも、盡十方なりと諦觀し決定するなり。これ未曾聞をきくなり。方等なるゆゑに、界等なるゆゑに。人體は四大五蘊なり、大塵ともに凡夫の究盡するところにあらす、聖者の参究するところなり。また一塵に十方を諦觀すへし、十方は一塵に嚢括するにあらす。あるひは一塵に僧堂佛殿を建立し、あるひは僧堂佛殿に、盡界を建立せり。これより建立せり、建立これよりなれり。恁麼の道理、すなはち盡十方界眞實人體なり。自然天然の邪見をならふへからす。界量にあらされは廣狭にあらす。盡十方界は、八萬四千の説法蘊なり、八萬四千の三昧なり、八萬四千の陀羅尼なり。八萬四千の説法蘊これ轉法輪なるかゆゑに、法輪の轉處は、亙界なり、亙時なり。方域なきにあらす、眞實人體なり。いまのなんちいまのわれ、盡十方界眞實人體なる人なり。これらを蹉過することなく學道するなり。
身學道といふは、身にて學道するなり、赤肉團の學道なり。身は學道よりきたり、學道よりきたれるは、ともに身なり。盡十方界、是箇眞實人體なり、生死去来、眞實人體なり。この身體をめくらして、十悪をはなれ八戒をたもち、三寶に帰依して、捨家出家する、眞實の學道なり。このゆゑに眞實人體といふ。後學かならす自然見の外道に同することなかれ。
百丈大智禅師のいはく、若執本清淨本解脱自是佛、自是禅道解者、即属自然外道。
これら閑家の破具にあらす、學道の積功累徳なり。𨁝跳して玲瓏八面なり、脱落して如藤倚樹なり。或現此身得度而為説法なり、或現他身得度而為説法なり、或不現此身得度而為説法なり、或不現他身得度而為説法なり、乃至不為説法なり。
しかあるに棄身するところに揚声止響することあり、捨命するところに斷腸得髄することあり。
今年の施食会は非常に強い台風7号来襲のニュースを受け、本堂の設営は急遽前日の午後3時から行うことになりました。急な準備作業変更のため設営に集まることができたのは5名でした。
設営人数が少ないこともあり、五色幕張りは止めることにし、柱の水引柱巻と横断幕だけを付けることに致しました。
また施餓鬼棚を須弥壇脇の納戸から出して所定の位置にセッティングし、四方に竹の笹と四天王幡を括り付け、施餓鬼棚の後方に五如来幡を掛けました。さらに来場者用の椅子を40席セッティングしました。2時間ほどで前日の準備作業は終了しました。
当日は台風が房総半島に接近し、朝から小雨混じりの空模様となり、前日までの猛暑は一服しました。午前10時に施食会をお手伝いするメンバーは集合し、担当を割り振りしてから早めの昼食をいただき、それぞれ持ち場につきました。
12時頃から時々強風が吹き、叩きつけるような雨が降ることもありましたが、心配したほどの台風による影響は少ないようで、午後1時から新盆の方々が次々とお見えになりました。
午後2時から明石方丈様を導師として入堂され、6名のご随喜の僧侶の方々と共に施食会が始まりました。エアコンが効き小雨が降っているので、本堂の中は少し寒いくらいです。
『大悲心陀羅尼』などのお経が読まれた後、新盆を迎えられた方々のお名前が読み上げられ、『修証義』が唱えられる中、新盆関係者のお焼香が行われました。
また『大悲心陀羅尼』などのお経が読まれた後、『修証義』が唱えられ、今度は龍泉院の役員や参禅会員が焼香しました。
午後3時に施食会は終わり、新盆の方には卒塔婆とお土産をお渡しました。新盆以外の方の卒塔婆は例年は本堂から外に出して並べていましたが、台風のため本堂の中に並べることになりました。
卒塔婆を受け取りに来られた方々は、本堂に入り自分の卒塔婆を探してから、墓地の方に向かわれました。我々も施餓鬼棚や幡や椅子などを片付け、小畑節朗様からの添菜をいただいて、午後4時には龍泉院を後にしました。
6月2日(日)に一日接心が行われました。参加者は明石方丈様と参禅会員12名の計13名でした。
当日は、朝から不安定な天気でありましたが、何とか持ちこたえている状況です。
8時に参加者全員が集合し、今年も昨年度同様、坐禅は全部で四炷、四炷目の前には行茶も行います。
接心中の講義は、明石方丈様が自らの半生を語っていただけるとのことです。
また例年二回に分けていた読んでいた『普勧坐禅儀』を、四炷目の時に全部を通して読むこととなりました。