第41回成道会が12月3日(日)に行われました。お釈迦さまが菩提樹の下で12月8日の明けの明星をご覧になられ、お悟を開かれたことをお祝いするのが成道会です。今年は8日が金曜日なので、前倒しで3日の日曜日に行いました。
近年は地球温暖化で初冬も暖かい日が続いていますが、今年の成道会の朝は初冬らしく冷え込み、境内には薄く霜柱が立っていました。
午前8時半から成道会のリハーサルが行われ、9時から釈尊成道への報恩の坐禅を二炷行いました。坐禅の後、本堂に移り、殿鍾が三会打ち鳴らされ、続いて七下鐘が打たれて、明石方丈様を導師とする一行が入堂しました。
導師がご本尊に向って釈尊の成道を讃える頌を述べられ、続いて普同三拝、般若心経一巻を一同で諷誦し、維那が回向文を読み上げ、普同三拝をした後、導師との問答に移りました。
問答のトップバッターは元気な相澤さんが務められました。大きな声で明石方丈様に問いかけます、
問、「大事にすること、大事にしたいことは如何に」
明石方丈様は冷静に答えます。
答、「それぞれの菩提心」
方丈様のお答えを受けて相澤様は、「尊答、謝し奉る」と謝辞を述べられました。
このように、方丈様との問答の最後が、今年からこれまでとは少し異なりました。
次いで佐藤さんから
問、「参禅12年目、お言葉を賜りたい」
答、「只管打坐」
次いで松井さんから
問、「作務にて草花を切りまくる。殺生との折り合いは如何」
答、「命をいただく徳もある。このことから顔を背けてはなりません」
次いで杉浦さんから
問、「いつの世も戦争が絶えず心が痛む。ここは穏やかな平和思想の佛教の出番であり、まさに佛教界挙げて対応するすべきと思うが、如何」
答、「まさにその通り。御佛の尊い教えを信じ行ずるなら、世界平和は実現するでしょう。そのように心掛けて精進してください」
次いで小畑代表から
問、「和尚、百年後は如何」
答、「百年後も嫡嫡相承、佛の教えや私の教えは後世に伝えられる」
次いで中嶋さん
問、「上山40年、感謝申し上げます」
答、「引き続き感謝の心をもって精進してください」
次いで岡本さん
問、「年と共に迷っています」
答、「それこそ佛教に精進する姿です」
問答は以上で終わりました。引き続き明石方丈様からご法話を頂きました。ご法話は無駄の意義についてでありました。ご法話の内容は次の通りです
「3つの無」という言葉があります。ムリ・ムダ・ムラです。普段の仕事ではこのムリ・ムダ・ムラを省くことが大事だと言われており、人材育成の分野でも、ムリ・ムダ・ムラを徹底的に省くことが求められています。しかし人材育成において、無駄の効用が有ることを語る人がおられるのです。
法隆寺専属の宮大工であった西岡常一さんには、人材育成における無駄の効用を語る著書があります。西岡さんは大工さんなのに、祖父のすすめで畑違いの農業学校に入学したのですが、木を見定める力を養うことができるなど、結局は無駄にならなかったと述べられています。
また宮大工の修行に入っても、直接師匠から教わるのではなく、「見て習う」という、まどろっかしく無駄な仕方であったが、結局は印象に残り、自分の血肉になったと述べられています。
職人の徒弟制度は、短期間に同様な能力を持つ人材を大量に育成する方法ではないけれど、一人ひとり違う人材を育てるという方式には合っています。同じような人材を育てようとする現代の教育より、一人ひとりの個性に合わせた徒弟制度の方が、よほど人間的な育て方ではないでしょうか。
『正法眼蔵随聞記』には、「玉は琢磨によりて器となる、人は練磨によりて仁となる。何の玉か、はじめより光有。誰人か初心より利なる。必ずみがくべし、須練。自、卑下して学道をゆるくする事なかれ。」とあります。人が真の仁になるためには、一見無駄と思われるような、ひと手間が必要となるのです。そのひと手間こそ徒弟制度であり、自分の力でモノゴトを考える習慣を身につける、それが切磋であり錬磨であります。良い無駄を無下にせず、価値あるものに変えて行く、これこそが人を育てて行く上の要だと思います。
ご法話の後、大悲殿に移り茶話会が行われました。茶話会では今年限りで参禅会の代表幹事を退かれる小畑さんから、次のようなお話がありました。
椎名老師と二人三脚で参禅会を約50年間歩んできましたが、この間ご老師は全く「ぶれない、あきらめない」人でありました。そのようなご老師のもとで何とか50年間お付き合いさせていただいてきましたが、今は四大不調となり、自分の身の回りのことで手一杯の状況です。また今年の10月に代表幹事を置かない方針が出ましたので、身を引くことにいたしました。ただ自由参禅の準備だけは、今後とも続けて行きたいと思います。
小畑さんのご挨拶の後、明石方丈様から、来年の1月と9月の定例参禅会は、第四日曜日の前日に変更する旨のお話がありました。
なお成道会の参加者は15名でした。