今月の提唱

『正法眼藏』「谿聲山色」の巻(10)

IMG 3407JPG 1また、心も肉も、懈怠にもあり、不信にもあらんには、誠心をもはらして前佛に懺悔すべし。恁麼するとき前佛懺悔の功德力、われをすくひて清淨ならしむ。この功德よく無礙の淨信・精進を生長せしむるなり。淨信一現するとき、自他おなじく轉ぜらるるなり。その利益あまねく情・非情にかうぶらしむ。その大旨は、ねがはくはわれたとひ過去の惡業おほくかさなりて、障道の因緣ありとも、佛道によりて得道せりし、諸佛諸祖われをあはれみて、業累を解脫せしめ、學道さはりなからしめ、その功德法門あまねく無盡法界に充滿彌綸せらん、あはれみをわれに分布すべし。佛祖の往昔は吾等なり、吾等が當來は佛祖ならん。佛祖を仰觀すれば一佛祖なり、發心を觀想するにも一發心なるべし。あはれみを七通八達せんに、得便宜なり、落便宜なり。
 このゆゑに龍牙のいはく、昔生未了今須了、此生度取累生身。古佛未悟同今者、悟了今人卽古人。《昔生に未だ了ぜずは今須らく了ずべし、此生に累生身を度取す。古佛も未悟なれば今者に同じ、悟了せば今人卽ち古人なり》しづかにこの因緣を參究すべし、これ證佛の承當なり。
かくのごとく懺悔すれば、かならず佛祖の冥助あるなり。心念身儀發露白佛すべし、發露のちから、罪根をして銷殞せしむるなり。これ一色の正修行なり、正信心なり、正信身なり。正修行のとき、谿聲谿色、山色山聲、ともに八萬四千偈ををしまざるなり。自己もし名利身心を不借すれば、谿山また恁麼の不惜あり。たとひ谿聲山色八萬四千偈を現成せしめ、現成せしめざることは、夜來なりとも谿山の谿山を擧似する盡力未便ならんは、たれかなんぢを谿聲山色と見聞せん。

正法眼蔵 谿聲山色
爾時延應庚子結制後五日在觀音導利興聖寶林寺示衆

今月の所感

IMG 3419JPG 1今月の「谿聲山色」のご提唱は、懴悔し発露白佛することを勧めている箇所です。『修証義』の第二章「懴悔滅罪」に今回のご提唱の箇所が取り入れられていますので、皆様もよくご存じのところかと存じます。


道元禅師は、佛道修行に対して怠け心が起こり怠けるような行為によって、佛への不信感が生じた場合は、まず釈迦牟尼佛の前で懴悔すべきである。そうすれば懴悔の功德力で心身ともに清浄にしてくれるのだと示されています。
我々などグウタラで怠け心がいっぱいの者は、しょっちゅうお釈迦さまの前で懴悔していなければなりませんが、全く懴悔の気持ちすら無いのですから、身心ともに不浄だらけになっていることには間違いありません。不浄な心で世間を見たり、他人と接して行くのですから、世間を正しく見たり、他人と正しく交わることができなくなります。この事にハッと気づかされると、仏壇の前で懴悔しなければならないという気持ちも起こって来るのではないでしょうか。

 

一旦お釈迦さまの前で懴悔すると、その功德は自由自在に浄信や佛道への精進の心を育ててくれるばかりでなく、他人にも同様の功德力が発揮され、その利益は人間界・自然界にも及ぶとされています。なんと私一人の懴悔の功德が人間界・自然界まで及ぶとなると、これは懴悔せずにはおられません。

 

この後、懴悔の大旨が述べられていますが、大旨の後に、「佛祖の往昔は吾等なり、吾等が當來は佛祖ならん」と続きます。佛祖といわれる方も昔は我等と同じであり、我等も未来は佛祖となるであろうと述べられているのです。何と心強く有難いお言葉ではありませんか。

 

次に龍牙さんの頌が出て来ます。頌の内容は「佛祖の往昔は吾等なり、吾等が當來は佛祖ならん」と同じです。龍牙居遁(835〜923)は洞山良价禅師の法嗣で、『従容録』の第80則「龍牙過板」に登場する方です。『明珠』68号の「従容録に学ぶ」60に、ご老師が詳しく解説されていますので、ご参照ください。

 

龍牙さんの頌の後に、「かくのごとく懺悔すれば、かならず佛祖の冥助あるなり。心念身儀發露白佛すべし、發露のちから、罪根をして銷殞せしむるなり」とあります。懴悔した上で更に心に念じ身に威儀を正し、犯した罪をお釈迦さまの前で口に出して言いあらわすのが良い。口でいいあらわすことによる力が、罪悪の根源を跡形もなく溶かしてしまう。懴悔は心で行う行為ですが、それだけでなく、口に言いあらわすことが大事であることを道元禅師は述べられています。


確かに心で思っていることを声に出して述べるには、心の想いをある程度整理しなければ声にすることができません。また声を出すことによって、心の中にある不安やもやもやとした悩みも実体化することになり、軽くなる効果があると思われます。
2月から始まった「谿聲山色」の巻も今月で終了となりました。来年1月からまた新しい巻が始まります。

今月のお知らせ

IMG 3420JPG 1晩秋の冷たい雨がそぼ降る参禅会でした。
12月に入ると第一日曜日には成道会、第二日曜日には歳末助け合い托鉢と行事が続きます。また忘年会のシーズンにも入ります。コロナは第5類に分類され、コロナに対する不安も薄らぎ、今年の忘年会はコロナ以前よりも活況化するとの報道が見受けられます。
一方、参禅会の参加者数をみるとコロナ以前の状況までには戻っていません。参加者の減少は単にコロナの為ばかりではないかもしれません。参加数が多いばかりが良いことではありませんが、何時かは検討することも必要かと思います。

 

河本月番幹事からのお知らせ


・今後は色々な行事がありますので、ご協力をお願いいたします。
・12月9日(土)には自由参禅を行います。

 

佐藤年番幹事からのお知らせ


・今年は参禅会の主催者が明石方丈様に代わった歳でした。
・12月3日(日)の成道会の参加申込者は14名です。集合は8時45分ですが、配役の人は8時半からリハーサルを行います。
・12月10日(日)は歳末助け合い托鉢があります。参加申込者は9名です。午前12時半に長全寺に集合し、午後3時まで柏駅東口で行います。
・龍泉院様からカレンダーをいただきました。お持ち帰り下さい。
・齋藤さんは体調不良でお休みしていますが、来年は復帰したいと連絡がありました。小林さんもお元気になりましたが、まだ参禅会への復帰はご無理とのことでした。

 

杉浦『明珠』編集委員長からのお知らせ


・11月8日(水)に柏市公認のイベントである「お寺でカフェ」が大悲殿で開催されました。その中で河本さんや坂牧さんのご協力を得て、坐禅体験会が初めて行われました。
・「従容録に学ぶ」はまだ30則残っているので、椎名老師の意向で、『明珠』81号より二則ずつ掲載することになりました。
・『明珠』81号について皆様にお願いをまとめたものをお配りしますので、宜しくご協力のほどお願いいたします。

 

                                                  『明珠』81号発行に際してのご協力のお願い

小畑代表幹事からのお知らせ


・成道会には是非ご参加くださるようお願いいたします。

 

明石方丈様からのお知らせ


・12月は二週連続で日曜日に行事があり、一週おいて定例参禅会があります。年末でお忙しいと思いますが、なるべく多くの方のご参加をお待ちしています。

 

今月の司会者 佐藤修
今月の参加者 17名
来月の司会者 佐藤修平