今月の提唱
『正法眼藏』「阿羅漢」の巻(4)
洪州百丈山大智禅師云、眼耳鼻舌身意、各各不貪染一切有無諸法、是名受持四句偈、亦名四果。
而今の自他にかかはれさる眼耳鼻舌身意、その頭正尾正、はかりきはむへからす。このゆゑに渾身おのれつから不貪染なり、渾一切有無諸法に不貪染なり。受持四句偈おのれつからの渾渾を、不貪染といふ、これをまた四果となつく。四果は阿羅漢なり。
しかあれは而今現成の眼耳鼻舌身意すなはち阿羅漢なり。搆本宗末おのつから透脱なるへし。始到牢關なるは、受持四句偈なり、すなはち四果なり。透頂透底全體現成、さらに糸毫の遺漏あらさるなり。畢竟して道取せん作麼生道。いはゆる羅漢在凡、諸法教他罣礙羅漢在聖、諸法教他解脱。須知羅漢與諸法同参也。既證阿羅漢、被阿羅漢礙也。所以空王已前老拳頭也。
正法眼蔵 阿羅漢
爾時仁治三年壬寅夏五月十五日、住于雍州宇治郡観音導利興聖宝林寺示衆
今月の所感
今月の「阿羅漢」の巻のご提唱は、百丈懐海禅師のお言葉から始まります。百丈懐海禅師は馬祖道一禅師の法嗣で、「一日不作・一日不食」ということで有名な方です。
その百丈さんが「眼の耳も鼻も舌も身も意も、それぞれ一切の有るもの無きものに貪著することなし。これを名付けて四行詩を取り出すと言い、また名付けて四果となす」と言われました。この言葉は『天聖廣燈録』巻9の洪州大雄山百丈懐海禅師の章に見える言葉です。
椎名老師は今から40年前の1982年に、駒澤大学仏教史蹟参観団として大雄山を訪れ、その時に撮られた大雄山の写真を見せてくださいました。そこには本当に粗末な小屋みたいな伽藍が建っているだけでした。ご老師によると、今の大雄山はとてつもない大伽藍が並び建っており、昔の面影は全くないそうです。
この百丈禅師の言葉について、道元禅師は次のように拈提されています。
今の自己にも他己にもかかわらない眼・耳・鼻・舌・身・意というものは、徹頭徹尾はかりしれないものである。この故に、全身自ずから貪著するところが無いのである。色々有るもの無いものに全て無貪著なのである。
四行詩を取り出して自ずから水がコンコンと流れることを無貪著と言うし、これをまた四果とも言うのである。四果とはすなわち阿羅漢果のことである。
そのようであるから、今ここに現成している眼・耳・鼻・舌・身・意は、それがそのまま阿羅漢なのである。徹頭徹尾透きとおっているのである。はじめて肝心要の関所に到ることになったのは、四行詩を取り出したからであるが、それがそのまま四果なのである。頭から最後まで全体が透きとおっているので、ごくわずかな手抜かりなど無いのである。
では、つまるところだけを言うと、次のようになる。
羅漢がまだ凡俗にあった頃、もろもろの存在は彼をして心を覆いさまたげていた。だが羅漢が聖者に到ると、もろもろの存在は彼をして心を自由ならしめた。だから知るべきである、
羅漢ともろもろの存在とは、いつも一緒なのである。阿羅漢になったことが明らかになることによって、阿羅漢が阿羅漢になるのである。故に、人間の生命意識が起こらない以前から存在する老けた握り拳、則ち本来の面目なのである。
これで「阿羅漢」の巻のご提唱は終わりましたが、ご老師は、「この巻も大変難しい巻でしたが、要は、あなた自身が阿羅漢であり、阿羅漢になりきることが大切である、ということが説かれているのだと思います」と結びのお言葉を述べられました。
このところ、「阿羅漢」「春秋」「「光明」「空華」と、短いながらも大変難解な巻が続きました。次回からはこれまでよりは易しい巻を読んで行きたいと、ご老師は仰っておられました。
杉浦在家得度式担当からのお知らせ
・小林さんがプリンタをフルに活用して在家得度式のアルバムを作成してくださいました。参加された方にお配りします。
五十嵐洞山良价千百五十回遠忌担当からのお知らせ
・記念講演の参加申込者が75名です。定員100名からは大幅に少なくなっています。まだ参加申込をなされていない方はご検討をお願いします。参加申込をされた方は、ご家族など周りの方に同行されるよう、お声をおかけください。
・懇親会の参加申込も少ないです。多くの方のご参加をお待ちしています。
松井年番幹事からのお知らせ
・12月4日(日)の成道会の参加申込は13名です。11月の定例参禅会の時にも参加の有無をお聞きします。
小畑代表幹事からのお知らせ
・これまでの50年を締めくくる第5回在家得度式が無事円成しました。これからの50年を続けて行けるよう、今後の参禅会のあり方について、ご検討くださるようお願いいたします。
椎名東堂老師からのお知らせ
・参禅会50周年の記念行事である「洞山良价千百五十回遠忌」の参加申込がこんなに少ないのは、これまでの記念行事では初めてです。自分たちが創ってきた50年の歴史の上にあるのです。参加してみるとよかったと思うことがきっとある筈です。是非奮ってご参加してください。ご自分の分身であるご家族など周りの人を引っ張て来てください。
今月の司会者 松井 隆
今月の参加者 20名
来月の司会者 松井 隆