得度式
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午前10時45分、雅楽が流れる中、法弟は本堂に入り戒師様の入堂を待ちました。
戒師様が入堂された後、上香普同三拝があり、戒師様が法弟21名の得度を請する奉請・礼賛が述べられました。
続いて得度者全員へ浄水を注ぎ身を清める洒水灌頂が行われ、新得度者が一人づつ戒師様の前に進み出て、剃髪を受けました。
剃髪の儀の次に安名と絡子の授与行われ、新得度者は一名づつ戒師様の前に進み出て、都菅の明石住職様から絡子を首に掛けてもらい、安名の入った絡子袋をいただきました。また、松井さんと小畑代表幹事は絡子を再度いただきました。
絡子授与の後、全員で「搭袈裟之偈」をお唱えし、戒師様へ五体投地の三拝を致しました。
次に十六条からなる菩薩戒を、一句ずつ戒師様に続いて全員で唱和し、最後に戒師様の「能く保つや否や」との問いかけに対して、法弟全員で「能く保つ」とお答えしました。
授菩薩戒の後、全員にお血脈が授与され、今回の法弟の中では最年少の市川洋介さんが、誓いの言葉を述べられました。
これまで菩薩戒は守らなければならない義務として受け止めていましたが、最近になって、日常生活を有意義に過ごすための努力目標であるということを知りました。良き習慣を身につければ、逆に身を守ってくれるようになると思います。
『華厳経』の出てくる善財童子は53人の善知識を歴訪し、真実の智慧を体得しました。私は是非善財童子を見習いたいと思います。これからの世の中の動静について見極めて行くためには、十分な体力と冷静な判断力とが必要となります。今回受けた菩薩戒は体力と判断力を養成する上で、どのような働きをするのか、じっくりと見極めて行きたいと思います。
以上が石川洋介さんの誓いの言葉でした。
戒師様が回向文と処世界梵を読み上げられ、普同三拝の後、説戒にかえて祝辞が述べられました。祝辞では戒律の中でも最も重要な箇所について、掻い摘んで次のようなお話がありました。
仏教には非常に多くの戒律があり、細かいルールが設けられていますが、これは人を束縛するためではなく、精神を楽にするためのものです。
東日本大震災の後、「絆」という言葉が大流行しました。「絆」とは家畜を杭につないでおくための綱で、束縛を意味しています。お釈迦さまは人間を束縛するするような戒律を創ることはありませんでした。
インド以来、戒律は250あるいは350あると言われてきました。しかし中国では菩薩の戒律はもっと少なくてよいされました。それが日本に伝わると、もっと簡略でよいというようになりました。最澄さんは48の戒を守ればよいとされましたが、さらに道元禅師はその中の16を守ればよいとされたのです。
それでは道元禅師は戒律を軽視したのでしょうか。そうではなく、生活全般の仕方について微に入り細に入り規定されたのです。例えば「洗面」の巻では、顔の洗い方を事細かに教えられています。「洗浄」の巻では、お手洗いの作法について、微に入り細に入り、実に事細かく規定されています。曹洞宗には「清規」があり、生活全般にわたって規定を作り守って行くようにしているのです。
十重禁戒として十の重い戒がありますが、これらは厳密には守れないのです。不殺生戒を守っていれば、殺虫剤などは使えないのです。嘘をついてはいけない。こんなことはまず守れません。しょっちゅう嘘をついているんです。しかし第三の不邪淫戒は守らなければ身を滅ぼしますし、家庭崩壊につながります。
普段の生活の中でこれは最低守って行かなければならないことを守り、常に自分の生きざまを揺るぎないものにしていって欲しいと思います。十六条は中々守れないし、守ることが難しからこそ、よい生活習慣を立て、よい生活習慣を守ることができれば、戒は自然と守ることができるのだと思います。
以上、戒律を守ることの意義について、ご老師からわかりやすいお話をいただきました。