「今月の講義を聴いての感想」


参禅会 五十嵐嗣郎

今月の提唱

『正法眼藏』「身心學道」の巻(9)

IMG 3666JPG 1生死去来眞實人體といふは、いはゆる生死は凡夫の流轉なりといへとも、大聖の所脱なり。超凡越聖せんこれを眞實體とするのみにあらす。これに二種七種のしなあれとも、究盡するに、面面みな生死なるゆゑに、恐怖すへきにあらす。ゆゑいかんとなれは、いまた生をすてされともいますてに死をみる。いまた死をすてされともいますてに生をみる。生は死を罣礙するにあらす、死は生を罣礙するにあらす、生死ともに凡夫のしるところにあらす。生は栢樹子のことし。死は鐵漢のことし。栢樹はたとひ栢樹に礙せらるとも、生はいまた死に礙せられさるかゆゑに學道なり。生は一枚にあらす、死は兩匹にあらす。死の生に相對するなし、生の死に相待するなし。

今月の所感 

今月は生と死とについて道元禅師が縦横に拈提されているところです。最初に「生死去来眞實人體といふは、いはゆる生死は凡夫の流轉なりといへとも、大聖の所脱なり」とあります。
死に変わり生まれ変わる我々の日常生活というものが、本来の自己そのものだという考えがある。それは我々の日常生活自体、凡夫があちらこちらにぶつかりながら経過して行くような状態ではあるけれども、それと同時に佛が解脱したような状態であるともいえるのである。

 

「超凡越聖せんこれを眞實體とするのみにあらす」。
だが、我々の日常生活の中で、凡人とか聖人とかの区別を超えたというだけで、「真実人体」といわれるのではない。
「これに二種七種のしなあれとも、究盡するに、面面みな生死なるゆゑに、恐怖すへきにあらす」。
日常生活を仏教的には二種の生死とか七種の生死という種類に分けることがある。二種の生死とは、分段生死と変易生死といわれるもので、分段生死は迷いの世界にさまよう凡夫が受ける生死のことで、変易生死は迷いの世界を離れ輪廻を超えた聖者の受ける生死のことである。また七種の生死とは、分段・変易・流入・反出・因縁・有後・無後と呼ばれるものである。流入・反出は入ったり出たり、因縁は原因と結果の関係、有後・無後は後に続く性格のものとその瞬間きりのもので後に続かない性格のものである。
このように我々の日常生活には様々な種類の違いはあるけれども、究め尽して行けば、結局のところ、どの人もどの人も皆な生き死にの世界にいるのだから、必ずしも恐怖すべきものではないのである。

 

IMG 3663JPG 1「ゆゑいかんとなれは、いまた生をすてされともいますてに死をみる」。
なぜ恐れる必要がないかといえば、我々の人生は瞬間、瞬間の存在であり、自分から生きるということを捨てなくても、常に消滅しているからである。
「いまた死をすてされともいますてに生をみる」。
瞬間、瞬間に我々の人生は消滅しているけれども、さらに生きていくという事実が現存している。
「生は死を罣礙するにあらす、死は生を罣礙するにあらす、生死ともに凡夫のしるところにあらす」。
生はけっして死を礙げるものではなく、死もまた生を礙げるものではない。その生と死の真相は、いずれも凡夫の知るところではない。

 

「生は栢樹子のことし。死は鐵漢のことし」。
栢樹子は趙州從諗が僧から「如何ならんか是れ祖師西來意」と問われ、趙州が「庭前の栢樹子」と答えたものによります。生とはたとえれば趙州の示した一本のコノテガシワのようなものであり、死とは鉄でできた非常に強固な人間のようなものである。
「栢樹はたとひ栢樹に礙せらるとも、生はいまた死に礙せられさるかゆゑに學道なり」。
趙州が仏道の中心的課題として説かれた庭先のコノテガシワが、たとえコノテガシワを礙げることがあっても、即ち生が生を礙げるようなことがあっても、生はけっして死に礙げられることはない。だから我々はどこまでも学道をつとめることができるのである。

 

「生は一枚にあらす、死は兩匹にあらす。死の生に相對するなし、生の死に相待するなし」。
もっとも別の立場から見ると、生とは単に生きるというだけのものであって、死というものと関連づけずに独立しているというものではない。従って「生は一枚にあらず」。しかしそれと同時に、生と死というものとが相対的に対立しており、生が一番目で死が二番目だという関係でもない。そのことを「死は兩匹にあらず」。死というものが生きるということと、見合っているということではないし、また生きるということが死ぬということと、お互いに寄りかかっている関係でもない。

今月のお知らせ

IMG 3668JPG 1衆議院選挙は「政治と金」の問題で、与党の過半数割れという結果になりました。今後の政局はどのように推移するのか不透明です。また11月5日(火)には米国の大統領選挙が行われます。
今年の夏の猛暑が長々と続き、やっと涼しくなったと思ったら、今年も残すところあと二ヵ月です。本当に一年が短く観じられるこの頃です。「生死事大、無常迅速。各宜醒覚、慎勿放逸」。 

 

小畑(二)年番幹事からのお知らせ
・12月8日(日)の成道会の参加予定者は8名です。
・来年の年番幹事を受付けています。若い方の応募を期待しています。 

 

明石方丈様からのお知らせ
・気候も良くなってきたので、周りの人に声をかけて、坐禅普及に努めてください。
・白井市で闇バイト強盗事件が発生しました。皆さん防犯に関心を持ってください。

 

今月の司会者 小畑二郎
今月の参加者 10名
来月の司会者 小畑二郎