1.洞山良价禅師千百五十回遠忌法要の経緯
龍泉院参禅会45周年の記念行事として、椎名老師著作の『やさしく読む参同契・宝鏡三昧』を大法輪閣から上梓しました。『やさしく読む参同契・宝鏡三昧』の出版を広く知ってもらうために、曹洞宗総合研究センターの小早川浩大さんと相談した時に、小早川さんから2019年には洞山良价禅師が1150回忌を迎えることになることをお聞きしました。
お聞きした時にはそう言うこともあるのかという思いでしたが、2017年に日本臨済宗各派が総力をあげて、臨済義玄禅師1150回忌を華々しく催しました。洞山良价禅師は臨済義玄禅師より2年後に示寂されました。だが、日本曹洞宗では曹洞宗の開祖である洞山良价禅師の1150回忌に関する動きは、全く見ることがありませんでした。
臨済宗では開祖の臨在義玄没後1150年に関する盛大なイベントが続々となされているのに、曹洞宗では開祖の洞山良价禅師没後1150年に関して、報恩の法要を行わないのは如何なものかと思い、小畑代表にお話したことがありました。
それからしばらくして、龍泉院参禅会50周年を迎えるにあたって、小畑代表から洞山良价禅師1150回忌を記念行事としてはどうかとの相談がありました。椎名老師は『洞山』を上梓されていることもあり、ぴったしの行事であると小畑代表に申し上げました。
龍泉院参禅会50周年の記念行事は、椎名老師に洞山良价禅師に関する記念講演をお願いし、次いで椎名老師と臨川書店の禅僧シリーズで『石頭』を上梓されている石井修道先生との対談を行うことで、小畑代表と基本的な合意ができました。
早速、小畑代表が椎名老師とこの基本案をご説明したところ、大筋ではご了解いただきましたが、洞山良价禅師に関する講演は、石井修道先生にお願いしたいとのことでした。石井先生には椎名老師からの強いての要請である旨をお伝えし、記念講演のご了解をいただきました。
2.記念法要準備作業について
第1回の50周年実行委員会で10月30日に実施することが決まり、第2回の実行委員会で報恩坐禅と記念法要は午前中に行い、午後から記念講演と対談を行うことになりました。
記念法要の差定では『参同契』と『宝鏡三昧』を全員でお唱えすることになり、また「献茶湯」が初めて加わりましたので、9月の定例参禅会の後にお唱えの練習を行い、10月の定例参禅会の後に、明石方丈様の指導を受けながら献茶湯とお唱えの練習を行いました。
献茶湯は洞山良价禅師を供養するために茶湯とお菓子を献ずることで、その進退は侍者と侍香が中心となっています。侍者の松井さんと侍香の山桐さんは何度も明石方丈様のご指導を受けましたが、まだ十分に会得できていないようなので、記念法要の直前のリハーサルの時に、再度ご指導を受けることになりました。
また、『参同契』と『宝鏡三昧』の諷誦もバラバラなので、ご老師のお唱えする声をよく聞いて、ご老師に合わせるようにとのご指導が、明石方丈様からありました。
「洞山良价禅師千百五十回遠忌」の前日、有志が集まり会場設営にあたりました。既に須弥壇には、杉浦さんが寄進された洞山良价禅師千百五十回遠忌の木主が設置されていました。山門に幕を張り、杉浦さんが用意してくださったマイクやアンプの調整を行い、演台や客席の椅子の配置などを確認しました。また、龍泉院様所蔵の「洞山過水図」の掛軸を本堂に向かって左側に掛け、その前に香台設置しました。
3.記念法要実施
10月30日午前9時に50周年記念実行委員は本堂に集合し、行動計画について打ち合わせ、確認を行った後に、「洞山良价禅師千百五十回遠忌」報恩の坐禅を一炷行いました。坐禅には記念講演をしてくださる石井修道先生や東京都荒川区の正覚寺ご住職の山田悠光老師とお弟子の裕証さんもご一緒に参禅されました。
一炷の報恩坐禅の後、本堂に戻り、記念法要のリハーサルを行いました。リハーサルでは特に献茶湯の進退について、明石方丈様から再度ご指導をいただき、一連の動作が何とかスムーズに進むようになりました。
午前11時から記念法要が始まりました。雅楽が奏でられ七下鐘が打たれる中、椎名老師を導師とし、先導を佐藤さん、侍者は松井さん、侍香は山桐さんが務める一行が入堂しました。
上香普同三拝の後、これから洞山良价禅師千百五十回遠忌を行うことを佛祖真前に告白する表白文をご老師が読み上げ、次いで洞山良价禅師の遺徳を偲んで拈香法語を読み上げられました。
拈香法語が終わると献茶湯に移りました。何度も練習を繰り返してきましたが、本番でミスなく行うことができるか、注目の的です。伝供(出)役の明石方丈様が須弥壇の後から、お湯の入った献茶湯器を取り出し、侍者の松宇井さんに渡します。受け取った侍者は献茶湯器を捧げながら運び導師のご老師に渡します。ご老師は献茶湯器を香に燻らせて侍香の山桐さんに渡します。侍香は献茶湯器を捧げながら須弥壇の中にいる伝供(置)役の市川洋介さんの所まで運びます。受取った伝供(置)は定められた位置に献茶湯を置きます。
このようにして繰り返しお菓子とお茶を、伝供(出)役から導師を経て伝供(置)まで運び、須弥壇の所定の位置に置かれました。献茶湯はゆっくりと厳かに行われ、堂内は厳粛に雰囲気に包まれました。
献茶湯が済み、次は『参同契』と『宝鏡三昧』を全員でお唱えしました。『参同契』は石頭希遷禅師が撰述し、『宝鏡三昧』は洞山良价禅師が撰述されたもので、曹洞宗の寺院では、『参同契』・『宝鏡三昧』は仏祖諷経などで読誦されています。しかし、参禅会ではこの二つのお経は諷誦するのが初めてであり、しかもリズムを取る木魚が打たれないので、お唱えを揃えるのが大変難しいと感じました。
次に維那役の杉浦さんが回向文を読み上げ、普同三拝した後、導師一行は退堂されました。
記念法要の参加者はお役も含めて30名弱でしたが、日本で唯一の「洞山良价禅師千百五十回遠忌」法要が無事円成しました。(五十嵐記)