今月の提唱
『正法眼藏』「谿聲山色」の巻(2)
この居士の悟道せし夜は、そのさきの日、總禅師と無情説法話を参問せしなり。禅師の言下に飜身の儀いまだしといへども、谿聲のきこゆるところは、逆水の波浪たかく天をうつものなり。しかあればいま谿聲の居士をおどろかす、谿聲なりとやせん、照覺の流瀉なりとやせん。うたがふらくは照覺の無情説法の語ひびきいまだやまず、ひそかに谿流のよるの聲にみだれいる。たれかこれ一升なりと辨肯せん、一海なりと朝宗せん。畢竟じていはば、居士の悟道するか、山水の悟道するか。たれの明眼あらんか、長舌相清浄身を急著眼せざらん。
また香厳智閑禅師かつて大潙大圓禅師の会に学道せしとき、大潙いはく、なんぢ聡明博解なり。章疏のなかより記持せず、父母未生以前にあたりて、わがために一句を道取しきたるべし。香厳、いはんことをもとむること数番すれども不得なり。ふかく身心をうらみ、年来たくはふるところの書籍を披尋するに、なほ茫然なり。
今月の所感
筆者は今月の定例参禅会を所要の為、お休みしました。従って今月の所感は休止させていただきます。来月のご提唱をお聞きして、補完的に所感を述べることがあるかもしれません。